【イタリア安楽死】アグレッシブ&エネルギッシュな展開に爽快(2024年8月時点の最新情報)
イタリアは2019年に憲法裁判所が
「自分の意思に基づいて判断でき、かつ耐え難い苦痛を抱えている人に対する自殺ほう助は必ずしも犯罪に該当しない」という画期的な判決を下しました。
これは交通事故により重度の四肢麻痺で完全に身体が動かせなくなり、10年以上も寝たきり状態が続いていたフェデリコ・カルボーニの訴えを認めたものでした。

ローマ・カトリック教会の総本山『バチカン』があり、その影響力が強いイタリアにて安楽死を認めた事実は、社会に波紋を巻き起こしました。
イタリアの倫理委員会も彼の主張と裁判結果を踏まえて、とりあえず彼に限っては、安楽死することを承認。
2022年6月16日にイタリア母国の地にて無事に安楽死を成就されています。

…とまぁ、ここまでは世界の安楽死界隈においては『あるある裁判&結果』で珍しい事例でもなく、日本でも報道されていたのですが…
イタリア安楽死の動向を特徴づける一つの要素が…
『ルカ・コシオーニ協会』という団体の存在です。

この団体はALS(筋萎縮性側索硬化症)を患い、政治家&活動家でもあったルカ・コシオーニ(2006年に逝去)が設立したものですが…
その活動は日本人が驚くほどアグレッシブ&エネルギッシュです。
特に協会の会計員であり看板的&広告塔的な存在である『マルコ・カッパト』という人物は強い発言力を持ち、国民のヒーロー的存在です。

2019年の歴史的な判決後の2001年には国民投票を呼びかける活動を行い、瞬く間に実施に必要な50万の署名を獲得しています。最終的には120万獲得しています。
ついでに大麻の合法化を求める署名運動には60万人の支持を集めました。

しかしながら脳内が化石化してカチンコチン上級国民が跋扈する憲法裁判所によって
国民投票の実施は無視され、事実上却下されています💧ここら辺は日本と同じですね…。
そもそもフェデリコ・フェリーニの安楽死が実現したのも、それ以前にカッパトが起こした『攻めの一悶着』が端を発しています。
2017年2月、彼は交通事故により四肢麻痺&失明の状態にあった『ファビアーノ・アントニアーニ』(通称:ファーボ)に同行して、スイスの安楽死団体『ディグニタス』へ向かいました。
実を言うと、その当時のイタリアでは”スイス逝き”の同行者(家族、友人)は『自殺を手助けた人物』、つまり自殺ほう助罪の刑事対象でした。
日本のケースに当てはめて例えると…



このドキュメンタリー番組に出演した同行者は全員アウト🔥つまり
『自殺ほう助の罪』
を犯したと認定されます…
家族も通訳者もカメラマンもジャーナリストも…
「なぜ自殺を止めずに自殺を助けたんだよ‼」と罵られ、犯罪者として扱われるという事ですね。
安楽死のためにスイスに同行する者は刑事事件として逮捕され得る国があり、イタリアはもちろん、過去にはスペインやポルトガル、イギリスもそうでした。

※現在でもイギリスは状況と検察判断によっては逮捕案件(2024年6月)
そんな状況の中、当時カッパトは自ら同行者として名乗りを上げ、ファーボが無事にスイスで安楽死され帰国した後、イタリア社会で叫び声を上げます。
「ファーボのスイスでの安楽死を助けてやったで~」
「ほら逮捕してみろやゴミ政府🔥」
…と、わざわざ自己申告して検察(つまりは政府)を挑発して見せます。
まったく大胆な(狂かれた?)行動なのですが、カッパト&ルカ・コシオーニ協会は、こういう勇ましい形での問題提起を政府に常に突き続けています。
ちなみに彼は刑事告訴されかけましたが2年後、2019年に正式に「起訴はしない」とミラノ裁判所に言い渡され不起訴となっています。

この事件はその全体を指して『カッパト判決』と呼ばれイタリア安楽死の報道には頻繁に登場するので覚えておきましょう…しかしチャレンジの仕方がエグ過ぎて逆に笑えますw(ちなみに安楽死の件だけでなく色々な分野でブチかましています)。
この事件は「”可哀そうな”39歳の男性」と「カッパトの勇気ある行動」とニュースで報じられ、国民世論は一変します⇩

この事件があったからこその、冒頭で触れた2022年のイタリアの地での初めての安楽死が実現したのですね。
しかもフェデリコのケースでは、(自分の決断と力で安楽死できるように)ルカ・コシオーニ協会がクラウド・ファンディングを行い、80万円を集めて『特殊な安楽死装置』を制作しています。
協会は『あくまで』フェデリコの『意思と自己決定権』を尊重しながら強力なサポーターとして援助していたことが伺えます。

※倫理委員の『監視』はあったようですが、冒頭に記述した『許可』の元、(悪く言えば)ルカ・コシオーニ協会が独自に(勝手に?)率先して行動した形で…そこら辺もアメリとも違う『イケイケ精神』を感じます。とにかく熱いです…この協会の情熱ぶり。
ただ依然としてイタリアでは安楽死の『法制度化は進んでいません』。
現与党政権がバリバリの極右(反安楽死・反中絶・反同性婚)なので乗り気が無いように思えます。
現状では、フェデリコのように…
『ひとりひとりが保健当局に申請し許可をもらう形式』が続いている状態です。


そのため地元の保健当局は対応に追われているようですが、ノラリクラリと避けながら無視して許可を出さない状態が続いています。
結局許可が下りず、苦痛状態で亡くなったり、スイスへ向かわざるを得ない人々も続出しています。

イタリアの安楽死推進の展開は『ドラマティックで痛快』な要素があり、非常に興味深いです(正直…楽しい…)。今後の進展がどうなるのか、ワクワクしながら動向をチェックしています。
まだまだ語りたい事が沢山あるのですが、この辺で…続報があり次第お伝えしていきます。
ありがとうございます。